カインソガンの作り方

このページでは、インドネシアの伝統的な紺と茶色のバティック布(カインソガン)が作られる工程を説明いたします。バティックは細い筒の先からロウが出るチャンティン、あるいは銅製ハンコのチャップ、また両方の道具を使用する制作方法があります。
ここではチャンティンを使用した作品「Leaf arabesque」(No. B063)の制作過程をご覧いただけます。

カインソガンは藍とソガ、2つの染料で染めます。藍染めで紺、ソガ染料で茶色、全く染めない白、2色を重ねて染める黒、4色の表現が可能です。ソガ染料は様々な植物を混ぜて作ります。配色にはいくつかのルールがあります。輪郭線は茶色、点々は白、二重線の中は白。たくさんの模様が存在していて、作られる地域や時代が変わっても、カインソガンと呼ばれる布に統一感があるのは、このルールに則って染色されているからです。
※ソガ染料や模様は、布を制作する地域や工房によって独自性が生まれました。

  作業は細かく9工程あります。
  1. 下絵を鉛筆で布に写す
  2. ロウ描き
    輪郭線を描く(クロウォング)
    模様を描く(イセン) 
    点々を描く(ティティック) 
    面を埋める(テンボック)
  3. 裏面も表同様にロウ描き(ネルシ)
    輪郭線を描く(クロウォング)
    模様を描く(イセン) 
    点々を描く(ティティック) 
    面を埋める(テンボック)
  4. 下処理
  5. 藍染め
  6. ロウを外す
  7. ロウ描き
  8. ソガ染め
  9. ロウを外す
  10. 完成!

それでは、一つずつ見ていきましょう!

1. 下絵を鉛筆で布に写します

2. ロウ描き‥‥白と茶色で残したいところにロウを置きます

▲輪郭線を描きます(クロウォング:以下インドネシア語での各工程の名前)

▲模様を描きます(イセン)‥‥細かい模様の部分 まだまだ作業が続きます

▶︎点々を描きます(ティティック)
▶︎面を埋めます(テンボック)

3. 裏面も表同様にロウ描き(ネルシ)
  布の両面にロウを置くことで、よりしっかりとした防染が可能となります。

▲輪郭線を描きます(クロウォング)‥‥表面の線と同じ所に、裏からロウを置きます
▲模様を描きます(イセン)‥‥同様 まだまだ終わりません(汗)

▲点々を描きます(ティティック)‥‥同様 あともうちょっと‥‥

▲面を埋めます(テンボック) やっとロウ描きが終わり‥‥

4. 下処理‥‥布に付いた糊や汚れを洗い落とし、染まりやすいようにします

5. 藍染め

▲藍の染液に映る雲(左)と、キラキラした藍膜と藍の花(泡)

6. ロウを外します‥‥あらかじめアイロンで外しておくと、後の処理が楽になります

▲写真左半分は藍染めを終えた状態、右側はアイロンで外した部分
伝統的なソーピングとして、ヘラでロウをこそぎ取る方法(クロカン)と、お湯でたいて取るやり方(ロロッド)があります。
近代では石油系溶剤で取る方法もあります(いわゆるドライクリーニング)。

▲白と青色が綺麗。このカラー配色の布はカインビロン、またはカインビロニーといいます。

7. ロウ描き‥‥白と青色で残したいところにロウを置きます(前回と違うところにご注目!)

▲テカッとした茶色い部分にはロウが置いてあります

8. ソガ染め‥‥ソガとは茶色の混合染料の総称

▲染めた布を自然光に透かし、下からのぞいて 配色バランスを調整します。完全にロウを外すまで、仕上がり具合はわかりません。ドキドキ。

9. ロウを外す

▲アイロンをかけた状態。まだ全体に薄くロウがついています。ワクワク!

10. 完成! やった〜!
もともと藍一色で染めていた布を、どうして2色で染めるようになったのか、しかもこんなに手のかかる複雑なものにしてしまったのか? と不思議に思います。


模様を作る時は、出来上がりの配色バランスを考え抜いてデザインする必要があります。古典的な模様を見ると、4色が絶妙なバランスで成り立つところにいつも感嘆し、カインソガンの奥深い魅力を感じずにはいられません。

こちらのポートフォリオ(英語)では、さらに模様の詳細を知ることができます

また、この作品の下絵を販売しています(file No.531845396 on Adobe Stock)
ご自身で作ってみたいと思われた方は、ぜひ挑戦してみてください

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